その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「たぶん、こうして愛花が不安に思ってることも、悩んでることも。……さらに先を求めてるってことも、おーちゃんからしたら、可愛くて仕方がないんじゃないかな」
お姉ちゃんの言葉は、わたしの胸を通り抜ける。
そしてストン、とお腹のあたりに落ちた。
……確かに、その通りかもしれない。
おーちゃんは葛藤するわたしを見るのが好きだって言ってたし、よく、わたしにどうして欲しいのかも聞いてくれる。
この胸の内のモヤモヤを隠し通したまま、ひとりで解決しようとするのは間違ってるのかも。
……おーちゃんなら、このモヤモヤごと、わたしを受け止めてくれる……?
「……ありがとう、お姉ちゃん。わたし、頑張ってみる」
「どういたしまして。応援してるからね」
お姉ちゃんはトン、と肘で優しくわたしの身体をつついた。
刻んだパセリをわたしの手元にあるボウルに入れながら、フフ、と怪しい笑を浮かべる。
「愛花に誘惑されたときのおーちゃんの反応、わたしも気になるなあ」
「ゆ、誘惑って」
間違ってないかもしれないけど……!
「想像しないでよ、恥ずかしいから」
「うーん、想像したくてもできないや。おーちゃんが顔赤くしてるのなんて、酔っ払ったときしか見たことないもん」
「そ、そっか」