その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


赤くなったおーちゃんか……。

赤いというか、熱っぽいおーちゃんなら……何度か見たことあるけど……。


リアルに浮かび上がる記憶に、危うく鼻血が出そうになりかけて、慌ててかき消した。

そんなわたしに気づかないお姉ちゃんは、


「……あ。酔っ払うおーちゃんなら、今日もきっと見れるね」


思い出したように言って、わたしに流し目をよこした。


……そういえば。

出かけるときに叔父さんが、ウキウキでおーちゃんとなにを飲むか相談してたっけ。


「いくら酔ったおーちゃんが可愛いからって、今日はダメだよ。誘惑、しちゃ」

「〜〜っ、し、しないよ……っ」

「ふたりの愛の巣に帰ってからにしてよね」

「なにそれっ」


わたしに負けじと意地悪な顔を見せるお姉ちゃんから、プイッと顔を背ける。

切り終わった具材と調味料をやや乱暴にからめて、ラップをしようとして……。

細長い箱を探し、視線と片手をさ迷わせる。


すると視界の端に、スッとラップの箱が差し出された。

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