その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
見上げれば、スマホを片手に持った叔母さんが、やけに真剣な顔をして立っていて。
わたしの体温が、急激に冷えていく。
「……愛ちゃん。わたしは旺太くんのこと、心から信頼しているから大丈夫だって思ってるけど」
「……」
「……どんなときでも、慎重さだけは忘れないでいてね」
「……」
――穴があったら、入りたい……。
ほとんど聞かれていたのだと察して、わたしは小さな声で、ハイ、と答えた。
微妙な空気に包まれて、助けを求めるようにお姉ちゃんの方を見る。
素知らぬ顔をしてボウルに入ったタコをつまみ食いしたお姉ちゃんが、「美味しっ」という呑気な声を上げた。