その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「へえ。あんなにいい感じだったのに」


おーちゃんは意外そうに呟いた。


「もしかして、それで泣いた?」

「うん……」


わたしは不満げに口をすぼめた。

おーちゃんと見ることを楽しんでいたと言いつつも、しっかり登場人物に感情移入をしてしまっていた。

ヒロインと結ばれた後の主人公はとても幸せそうで、あまりにも切なかった。


「愛花は、もうひとりのほうを応援してたもんな」

「おーちゃんもそうだったでしょ」

「まあな」

「……積極的なのが可愛いって、ずっと言ってた」


わたしは、おーちゃんを見つめる目を細めた。


頭の中に、ふたり目のヒロインを演じていた女優さんが浮かんでくる。


……そういえば、このドラマがきっかけで、最近、人気が急上昇してるって、話題になってたっけ……。


「ああいう人が、タイプなんだ」


探るように言うと、おーちゃんは笑いながら、


「確かに、……弱いかもな。気持ちを素直に伝えて、健気に頑張るタイプ」

「……ふうん」

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