その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

ちらりと肩越しに振り返ると、気持ちよさそうな寝顔が見えた。

深い呼吸の合間に小さな声を漏らして、まるで引き止めるように、おでこをわたしの背中にくっつけてくる。

甘えるようなその仕草に、わたしはサッと再び身を倒した。


……か、かわいいっ……。

寝てても、可愛い……！


きゅうう、と締め付けられる胸を、思わず押さえた。


じりじりと元の位置まで戻ると、規則正しいリズムで吐き出される息を、首の後ろに感じる。


……起き上がるには、おーちゃんの腕を解かなきゃいけない。

後で戻ってきたって、……眠ってるおーちゃんが、またぎゅってしてくれるとは限らないし……。


喉の渇きと天秤にかけたら、そんなの結果は決まってる。

わたしは、再び目を閉じた。


ゴソゴソ、とシーツが再び音を立てた。

お腹に回されたおーちゃんの手が、ほんの少し動いて。

ついくすぐったさを感じて、口を押さえる。


……危ない。


せっかくのお休みなんだ。

ゆっくり、寝させてあげたい。


咄嗟に出かかった声をなんとか飲み込んで、わたしはホッと息をついた。

しばらくして、また、お腹のあたりがくすぐったくなる。


「……」