その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
02.漂う焦燥
「あ。ナルくんだ」
口の中の卵焼きをそのままに、美月が呟いた。
ついその視線を追って、窓の外へと目を向ける。
向かいに見える校舎のベランダに、白衣を身につけた先生がひとり、ぼんやりと中庭を見下ろしていた。
と、思えば、その背後から女子生徒が姿を現した。
何かを話しながら、中庭の花壇のあたりを指差している。
「相変わらず、女子に人気だねえ」
「……鳴海先生、いつも女の子といるよね」
「あの顔じゃあ、誰もほっとかないよ。始業式の日、うちのクラスも盛り上がってたじゃん」
美月の言葉に、わたしは記憶を遡った。