その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


……大人の、ギャップ……。


わたしは、お箸の先を見つめた。

頭の中には、普段は大人っぽくて頼りになるのに、たまに無邪気ないたずらをしてきたりするおーちゃんのこと。


……あ、なんかそれ、ちょっとわかるかも……。


「愛花。……今、おーちゃんのこと考えてるでしょ」

「……えっ」


な、なんでわかったの。


そう言いたげに見つめれば、へへんと得意げな笑みが返ってくる。


「そうだよねえ。愛花にはおーちゃんがいるから、ナルくんに興味を示すわけないんだった。おーちゃん以外のオトナな男の人なんて、みんなただのおじさんってわけだ」

「……おじさんはちょっと、言い過ぎなんじゃ……」

「おーちゃんって、いくつなんだっけ?」

「んと、今年で、25……」


そこまでいって、はたと気づく。


「鳴海先生と同い年だ」

「そうなんだ」


美月はふたつめの卵焼きを飲み込んでから、はああ、とため息をついた。


「いいなあ……。わたしも、包容力のある年上彼氏と付き合いたい。甘えたーい」


両手に顎を乗せ、空想の彼に想いを馳せているのか、斜め上を見上げていた。

< 26 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop