その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
……大人の、ギャップ……。
わたしは、お箸の先を見つめた。
頭の中には、普段は大人っぽくて頼りになるのに、たまに無邪気ないたずらをしてきたりするおーちゃんのこと。
……あ、なんかそれ、ちょっとわかるかも……。
「愛花。……今、おーちゃんのこと考えてるでしょ」
「……えっ」
な、なんでわかったの。
そう言いたげに見つめれば、へへんと得意げな笑みが返ってくる。
「そうだよねえ。愛花にはおーちゃんがいるから、ナルくんに興味を示すわけないんだった。おーちゃん以外のオトナな男の人なんて、みんなただのおじさんってわけだ」
「……おじさんはちょっと、言い過ぎなんじゃ……」
「おーちゃんって、いくつなんだっけ?」
「んと、今年で、25……」
そこまでいって、はたと気づく。
「鳴海先生と同い年だ」
「そうなんだ」
美月はふたつめの卵焼きを飲み込んでから、はああ、とため息をついた。
「いいなあ……。わたしも、包容力のある年上彼氏と付き合いたい。甘えたーい」
両手に顎を乗せ、空想の彼に想いを馳せているのか、斜め上を見上げていた。