その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
——あれ……?
わたしは、後ろを振り返った。
少し伸びた前髪の向こうで、長い睫毛が、肌に影を落としている。
まぶたはしっかり閉じられていた。
……寝てる、よね?
すり、と肌を撫でられる感触に、思わず肩が揺れた。
驚いて確認すれば、おーちゃんの綺麗な指が、僅かにパジャマの中に入り込んでいた。
ちょ、ちょっと……っ。
小さく身をよじった。
触れているそこに意識が集中して、ぞわぞわする。
声を出してしまわないよう、唇を噛み締めた。
おーちゃんが、小さく唸った。
ベッドを微かに揺らし、わたしの体にさらに身を寄せてくる。
それと同時に、入り込んだ手が、肌を滑るように上がっていって——。
「……っん」
我慢できず、甘い吐息が漏れた。
静かな部屋に落とされた自分の声に、自分で恥ずかしくなってしまう。
じわじわと、体が熱を帯びた。