その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「違うって。……気のせいだろ」


聞こえてくるのは、誤魔化しの言葉。

……たぶん、わたしの声が相手の人に聞こえてしまったんだろう。


彼女だと言ってもらえなかったことに地味にショックを受ける。

とぼとぼとソファに向かい、不満に感じているささやかなアピールとして、あえて、隣ではなく床に座り込んだ。


「元々、マンションにいた子だよ」


背中を向け、耳だけをおーちゃんの声に傾ける。


「……そ。懐かれたから、連れてきた」


……微妙に、間違いでもない……。


なんだか複雑な気持ちでいると、おーちゃんがソファから降りて、隣に移動してきたような気配がした。

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