その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「色は……」


膝を抱えていた手に触れられて、視線だけを向ける。


「白いよ」


言いながら、おーちゃんの親指が、わたしの手の甲を撫でた。

機嫌を伺うように、いたずらっぽい笑顔が覗き込んでくる。

わたしは再び、ふいっと視線を逸らした。


……わたし、猫じゃないもん。


いかにも不貞腐れてます、という顔をして見せれば、今度は髪をとかすように撫でられる。


「毛は、長いな」


心地よさに瞼を閉じそうになって——それだとますます猫みたいだ、と寸前で瞬きに切り替えた。


「……うん。すげー可愛いよ」

「……」


……猫じゃ、ないもん……。


そう心の中で弱々しく呟きながらも、隠しきれない嬉しさが、外へと漏れてしまう。

ふわふわと心が浮き上がる。

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