その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


あっという間に重なった唇に、慌てて目を瞑る。

触れ合ったそこから、わたしをこじ開けて入ってくる熱に、寝起きの頭がじんわり痺れた。

たっぷりと、いたずらにわたしをかき回して、……おーちゃんは、ゆっくりと顔を離した。


とろんと眠気の残った眼差しが降り注ぐ。

わたしを見下ろす無防備な表情に、思わず喉がこくりと動いて……、そういえば、と喉が渇いていたことを思い出した。


「……おはよ」


おーちゃんが、ふっと笑った。


「おはよ……う、んっ」


返事の途中で、思わず声が上ずった。

再び動き出したおーちゃんの手を、慌てて押さえる。


……忘れてた……っ。


「ねえ、待って。……わたし、喉が」


——渇いたの。


言おうとしたのに、降ってきたキスが、それを許してくれない。

優しく唇を吸われて、音を立てて離れた。

< 5 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop