その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「……どんな人なのかなって、思って……」

「……知りたいの?」


穏やかな問いかけに、わたしは、すぐに答えられなかった。


「愛花がそう思うなら、教えるよ」


わたしは、手元のアルバムへ視線を落とした。


「……自分でも、よく、わからない」


パタンと閉じると、ソファの端に置く。

それから目を背けるように、おーちゃんと向き合った。

背もたれに頬を預けて、すがるように目を上げる。


「気になるのに、……知っちゃったら……顔を見ちゃったら、後悔するような気がして……。だって、……きっと、嫌でも考えちゃうから。おーちゃんが、その人といるところ」


おーちゃんは、わたしの言葉を静かに聞いてくれていた。

首を倒して、同じように頬をソファにくっつけて。

ふたりの目線が、同じ高さで交わった。


「でも、同窓会は楽しんできてほしいって思ってるよ、本当に……」

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