その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「俺は、……想像したこと、あるよ」


目の前の整った顔が、少し照れたように歪んだ。


「同じ制服を着て、一緒に授業を受けたり、行事に参加したり、登下校したり……。学生時代の思い出の中に、同級生として俺の隣にいる愛花を、……何度も、想像してる」


とす、と胸を叩かれたような心地だった。

おーちゃんの言葉が、わたしの心に風穴を開けて、突き抜けていった。


すーっと、光や風が入ってくる。

たった今までぐちゃぐちゃしていたものが、……たちまち、抜けて、消えていく。


「でも、……想像しては、こうして一緒に暮らすことも簡単にはできないし、お前が大変なときに、何もできずにもどかしい思いをするんだろうなって考えると、……結局、これでよかったなって、思う」

「……おーちゃん……」


先ほどまでウジウジしていたのが、嘘のようだった。

自分でも気づけなかった引っかかりの正体が突き止められたように、靄が、一瞬にして消滅した。

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