その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「……ん、なに?」
「だから……」
気を取り直して、唇を開いたのに、またすぐに声の出口を包み込まれるように塞がれた。
わたしを翻弄する柔らかな舌の動きに、徐々に力が抜けていく。
それを見計らって、おーちゃんの手が、再びわたしの肌を撫で始めた。
自然に漏れ出す自分の吐息とおーちゃんによって、意識が鈍く、甘ったるいものへと変えられていく。
「ま……まってっ、てば」
「なんで」
微かに唇を離して、おーちゃんが言った。
「……嫌がらなかったくせに」
「それは、おーちゃんが寝てると思って……」
「別に、手を退かせばよかっただろ」
なにも言い返せずに、わたしは唇を噛んだ。
「……されるがままになって我慢してんの、……可愛かった」
囁くように言われて、カッと熱が顔に集まってくる。
悔しさを込めて見つめると、楽しそうな笑顔が返ってきた。