その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
……駅に行くのかな。
しばらく経っても、とことんわたしの行きたい方向へと歩く、目の前の後ろ姿。
勝手に、気まずい心地に襲われる。
どうやら目的地が同じみたいだ。
――決して、後をつけているわけじゃないんだから。
誰に責められている訳でもないのに、わたしは心の中でひとり、そう弁解をした。
駅に着き、改札をくぐる。
ホームに立ち入ると、ようやく人混みに紛れることができた。
わたしはホッと息をつく。
一度意識を逸らせば、七瀬さんの姿はすぐにわからなくなった。