その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


おーちゃんの前で浴衣を着るのは、初めてなわけじゃないけど……。

小学生の頃に着ていたものと比べると、だいぶ大人っぽいものだと思う。


……おーちゃん、どう思うのかな。


付き合う前だったなら、ちょっと意地悪に笑って、馬子にも衣装だとかなんとか、言うんだろうな。


……でも、今は……。

今のおーちゃんなら。


きっと、わたしの浮き立つ心を見透かして。

浴衣を選ぶのにものすごく時間がかかったことなんかも見抜いちゃって。

おーちゃんの反応を気にしているわたしの様子にも気がついて。


……全部、まるっとわかった上で、可愛い、って……言ってくれる気がする。


おーちゃんの浴衣姿が色っぽくてかっこいいのは、もう知っているから。

その隣に並んでも、きちんと釣り合うような女の子になれたらいいな。


少し前までの、兄妹のような関係で行くお祭りとは違って、……手を繋いで屋台を回りたい。

提灯の灯りを横目に太鼓の音を聞きながら、3人でお祭りに来たときの思い出話をしたいし、通りすがりのカップルを見る度におーちゃんとお祭りデートするのに憧れてたなあ、なんて懐かしみたい。


それが叶ったんだ、って嬉しくなって、最後には綺麗な花火を見て……。


みんなが空を見上げてる間に、こっそりおーちゃんのことを盗み見たら、偶然目が合って、それで――

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