その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
数年ぶりの浴衣姿は、なんだかそわそわ落ち着かない。
髪型は美月がとびきり可愛くしてくれて、そのお礼に、わたしも美月の髪の毛を結かせてもらった。
美月のほうは浴衣こそ着ていないものの、今日はうんと女の子らしくて、可愛い。
ふたりしてバッチリ気合いを入れて、高校生最後の夏祭りを万全な状態で楽しむ準備が整えられた。
あとは、楽しむだけだ。
「ちょっとはやく着いちゃったかな」
神社へと続く階段の下にある公園が待ち合わせの場所だけれど、まだ、おーちゃんの姿はない。
時間を確認すると、予定より10分ほどはやかった。
……なんだか、緊張してきちゃった。
ヘンなの。
相手はおーちゃんで、初めてのデートだっていうわけでもないのに。
わたしは落ち着かない心を紛らわせるように、あたりを見回す。
神社の下から、少し先の湖のある広場にかけて、提灯や屋台がずらりと並んでいて。
空はまだ明るいけれど、通りはすでに賑わっていた。
「美月もここで康晴たちと合流するの?」
「そうそう。――あっ、噂をすれば」
美月が声を上げたのとほとんど同時に、公園内の人混みの中に、康晴たちを見つけた。
……のだけれど。
「……え? なんで?」
その輪に加わっている思わぬ人物に、美月が困惑した声をもらした。