とある先輩の、歪んだ狂愛。
「…冷やかしですか」
「まったくその通り」
「帰ってください。わたしに構うとあなたまでいじめられますよ」
「俺もイジメる側なのに?」
なに言ってるの、このひと。
単純に頭のおかしい人なんだろうと。
「意外。もっとビクビクしてるThe・女の子だと思ってたんだけど」
見た目とは裏腹に少し低くかすれた声。
細身だというのに首や腕にはスッと筋が通っていて。
なんていうか、ギャップの塊が目の前に来た。
「…なるほどね、やっぱそーいう感じ」
さっきから何ぶつぶつ言ってるんだろう。
こういうのは関わっちゃ駄目。
わたしの目の前には誰もいない、ただ暗い景色が広がってるだけ。
「ちょ、」
「ん、うま」
お弁当からひとつ、大切に残しておいたアスパラベーコン巻きが奪われる。
わたしが手を伸ばすよりも先にひょいっと呆気なく男の口の中へと。
モグモグモグモグ、ごっくん。
「もう1コいい?」
「駄目です、いい加減にしてください」