とある先輩の、歪んだ狂愛。
「…うわ、ぜんぜん変わってないじゃん」
次にたどり着いた隣町の神社。
小高い場所にある神社は、人の目に留まらない小道の先にあって。
ここは誰も来ないような極秘スポット。
『ここなら人混み苦手な彩も平気でしょ?』
『…こんなところ、あったんですか』
『うん。俺が見つけたんだ』
『ありがとう、…あまねくん』
スゥッと目を閉じれば、昨日のことのように甦ってくる。
そのたった1回だった。
ふたりで浴衣を着て夏祭りに向かったのは。
『途中の屋台で何か買えばよかったね』
『あ、私…ラムネ買ってます』
肩を並べて座って、花火を見上げて。
手を繋ぎたくても繋げないもどかしさも、触れそうで触れない距離も。
ぜんぶ、覚えてる。
『彩がラムネって、なんか意外。炭酸とか苦手なイメージあったから』
『…男の子って、そういうのが好きかなって』
『あ、また俺に合わせてるし』
『でも、私も───…』