とある先輩の、歪んだ狂愛。




確かそのあとの言葉は花火の音に消されたんだっけ。

顔を俯かせて、俺に何かを伝えてくれようとしてた。


でもそのあと何度聞いてもはぐらかされて聞けず仕舞い。



「俺が、…ちゃんと聞いてあげてたら良かった」



聞いてあげているつもりだった。


いつも「なにかあったら俺に言って」と、必ず伝えてた。

でもそれは彼女からしてみれば「心配かけさせないで」って言葉に変換されていたこと。

だから俺が一番に追い詰めてしまってたこと。



「泣いたこと…なかったもんなぁ…」



1度も彩が俺の前で泣いたことはなくて。

弱音を吐いたこともなくて、それが何より強い子だって勘違いしていて。


笑顔の裏に隠させてしまって。



「…泣かせてすらやれなかった」



もしそのときだけでも「もう嫌だ」と言わせてあげられてたら、きっと何か違ってた。

もうやめたいって、逃げたいって。

そのときだけの冗談にしたっていいから言わせてあげられてたら。


なんて───…後悔。



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