とある先輩の、歪んだ狂愛。
歪んだ涙
少し苦しいくらいに帯が締められたかと思えば、空気を通すように隙間を作られて。
ピシッ、シュッ、パシッ。
手際よく着付ける様は、普段のお母さんはどこへ行ったのかと困惑してしまうほど。
「よしっ!完成!」
「…お母さん、ちょっと苦しい」
「それくらいがいいのよ。歩けば自然と身体に慣れてくるから!」
こんな浴衣、どこにしまってあったんだろう…。
サイズもぴったりだ。
「これはお母さんが昔着てたものなの」
薄黄色をしたフレッシュな色合いなのに白色、赤色と調和されたことでどこか和を感じられる模様。
帯は淡い水色の落ち着いたもの。
髪を緩くまとめ上げる小さなピンも飴細工のような和ものだ。
「高槻くんもきっと格好よくキメてきちゃうのねー!」
確か先輩も浴衣を着てくるって言ってたような…。
まだ待ち合わせ時間より少し前だけど、早めに出ておいても問題なさそう。
下駄で向かわなければいけないし、その待ち合わせ場所に辿り着けるかどうかも不安。