とある先輩の、歪んだ狂愛。
そうしたら、この人はなんて言うんだろう。
そう言ってないはずなのに、目の前の男には伝わってしまったらしく。
「そんなの…寂しい依存にしかならねぇだろ」
震える声は吐き捨てられるようにして、わたしに届いた。
そして彼は去ってゆく。
その人の名前も知らないけど、先輩の友達ならたぶん同じ学校の3年生のはず。
夏休み明けはもしかすると顔を合わせるかもしれない。
「…お母さんに…メール、しなきゃ」
会えたよって。
本当はとっくに会えてたんだけど中々メール出来なくて。
先輩と楽しんでくるねって、いつものように「嘘」を言わなくちゃ。
そんなことを思いながら、どれくらい立ちすくんでいたか分からない。
ワイワイガヤガヤと道を外れた先から聞こえる町人の声に紛れるように佇んでいた。
「───涼夏!」
そんなわたしに、背中から声がかかった。
グレー地に縦線が入った模様は夕暮れの中でもしっかりと見えた。
やっぱり似合ってる…と、声に出せない気持ち。
「迷子にでもなった?…心配した」