とある先輩の、歪んだ狂愛。
「こんなこともあろうかと来る途中で買っておいてさ」
縁側に並べられたじゃがバター、焼きそば、イカ焼き。
そして、ビー玉が中に入っているラムネ。
人混みが嫌いな誰かさんのため、こうしてゆっくり花火が見られる状況は揃ってしまった。
「どれから食べる?んー、ひとつ500円は取ろっかな」
「…高くないですか」
「俺の優しさが400円、あとは100円」
そう思うと先輩の優しさは安くも感じてしまう。
それって自分の価値を逆に下げてるような気もするけど…。
「あぁやっぱり嘘。俺の優しさが490円、残りは10円」
「屋台の人に謝ってください」
「じゃあ食べないってことで」
「…なんて、冗談です」
きっとわたしを元気付けてくれてる。
先輩のそんな優しさは分かりづらいようで意外と分かりやすい。
でもそれはわたしだけに向けられたものじゃなく、わたしに向けられたものでもない。
そんなものがどこか苦しい。