とある先輩の、歪んだ狂愛。




「どれから食べる?俺はやっぱイカ焼き」


「わたしは、…じゃがバターで」


「ふつう同じの食べない?」



ふわっと色素の薄い柔らかい髪が額に触れたような気がした。

こんなにも至近距離は幾度かあったとしても、違うドキドキが鳴っている。



「じゃあ、焼きそばにします」


「…結局俺の意見はどこいったの」


「それならラムネにしますか?」


「うん、ぜんぜん意味がわからないね」



先輩はふっと笑った。

2人だけ、わたしと先輩の2人だけなのに。



「走ったから炭酸吹き出すかも」


「先輩の出番です」


「俺、今日ちょっとお前の言葉が理解できないみたい」



ここにもう1人いるような気がして。

そして先輩はその人を見ている。


そんな2人を、わたしは遠くから眺めている感覚だ。



「…お、成功」



シュワワワッと炭酸は瓶の中に収まってくれた。

そんなラムネはひとつ。



「先どーぞ?」



お言葉に甘えてゴクッと喉へ。


炭酸が弾けて、飛んで。

真夏の暑さが少し緩和されてゆくよう。



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