とある先輩の、歪んだ狂愛。
「俺も」
わたしの手からひょいっと奪われたラムネ。
当たり前のように同じ場所に口付けて、「久しぶりに飲んだ」なんて一言。
そんな言葉さえズキッと胸が痛む。
「お、花火あがった」
「……きれい、」
「んね。スターマインじゃない?」
何発もの火花が暗い夜空へと咲いて、先輩の横顔を光らせる。
先輩…楽しいのかな。
わたしなんかとお祭りに来て、半ばお母さんに無理やり言われてたようなものだし。
「じゃがバター、おいしい?」
「…はい」
「んじゃ俺も」
並ぶ肩が、触れそうで触れない距離が。
どこか寂しくて切なくてもどかしくて、苦しくて。
「…うま。お祭りってなんでこんなに特別感あるんだろうね」
「……こういうのが、…幸せだからじゃないですか」
「…幸せ?」
先輩はスッとわたしを見つめた。
ぐっと言葉を飲み込もうとしても、その眼差しが聞いてくる。
お前のペースでいいよ、と言ってくれる。