とある先輩の、歪んだ狂愛。




ドーーンと大きく上がった花火。


きっと今日でいちばん大きいもの。

そんな音に消されてしまったと思ったのに、先輩は大きく見開いた目でわたしを捉える。



「わたしは、彩にはなれないです。彩は…もうどこにもいません」


「……わかってるよ、…そんなこと」


「…わたしはそんなに、可哀想でしたか」



可哀想だと、先輩に言われてはじめて気づいた。

それまで自分が「可哀想」だと思ってなくて、「憐れ」で「惨め」だとも。


先輩がずっと大切だった人に重ねてまでも関わるくらい、わたしは可哀想でしたか───…。



「やっぱりわたしは…麻痺してるから、わからないんです」



疎(うと)くなってる。

だから先輩があの日わたしに声をかけてくれた理由が「可哀想」だと思っていたからだとしても。


なんにも、わからない。



「先輩。……彩に、…会いたいですか?」



まだ、好きですか?

いまも彼女のことをずっとずっと想い続けていますか?

すべてを後悔して、もしそのときに戻れたらって、今でも望みますか?


先輩は、本当にわたしに彩を重ねていたんですか───…?



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