とある先輩の、歪んだ狂愛。
そんなたくさんの質問を「彼女に会いたいか」、そのたったひとつにまとめた。
わたしがそれに対して望んでいる答えもひとつだけ。
「ううん」って否定をしてほしくて。
そうじゃないって、言ってほしくて。
「…どこで、知ったの」
わたしは、答えない。
その質問には答えない。
いま質問してるのはわたしなんだから、先輩のターンじゃない。
「わたしは彩じゃないです、先輩」
「…知ってるよ」
「彩じゃ、ないんです」
あぁ、歪んでいく。
先輩の顔もわたしの顔も歪みに歪んで、グラッと狂って。
「彩に、会いたいですか?」
だから忘れないようにもう1度聞いた。
その歪みに取り込まれてしまわないように、しっかりと手繰り寄せて引き寄せた言葉。
胸が痛い。
その答えによって、わたしはたぶんこの上なく苦しくなるだろうから。
「───……会い…たい…」
ほら、苦しくなった───…。
その頬に流れた涙だって、炭酸みたいに弾けて消えてしまえばいいのに。
悔しそうに泣く先輩なんか見たくない。
そんなふうに啜り泣く先輩なんか、想像すらしていなかった。