とある先輩の、歪んだ狂愛。




できれば悲しんでほしい。

2日でいいから涙を流してほしい、そして3日目からはスッキリ忘れてくれるような。


それだけでわたしはきっと報われる。



「……綺麗だなぁ」



フェンスギリギリ。

膝丈の段差に足をかけてみた。


このまま痛みもなくスッて消えたとしたら、わたしは毎日のいじめから解放されるのは確かだ。


もうあんな惨めな思いしなくてよくなる。

「可哀想」って見られなくなる。



『…なんで……死んでんだよ、…残されたほうの気持ち考えたことある…?』



なんとなく、わかるような気がする。

先輩の気持ちじゃなく……彩の気持ちが。


彼女はきっと逃げたかったんじゃない。

死にたかったんじゃない、生きたかったに決まってる。

でも、少し、ほんの少しでも。


───…なにも考えず休みたかったんだ。



「そうでしょ…?」



ただそれだけだったの。

きっと彩にとって、そのときが一番幸せだったときなのかもしれない。

だから幸せのまま休みたかった。


だって、麻痺してるから。


わたし達は、麻痺してるんだって。



< 151 / 242 >

この作品をシェア

pagetop