とある先輩の、歪んだ狂愛。
できれば悲しんでほしい。
2日でいいから涙を流してほしい、そして3日目からはスッキリ忘れてくれるような。
それだけでわたしはきっと報われる。
「……綺麗だなぁ」
フェンスギリギリ。
膝丈の段差に足をかけてみた。
このまま痛みもなくスッて消えたとしたら、わたしは毎日のいじめから解放されるのは確かだ。
もうあんな惨めな思いしなくてよくなる。
「可哀想」って見られなくなる。
『…なんで……死んでんだよ、…残されたほうの気持ち考えたことある…?』
なんとなく、わかるような気がする。
先輩の気持ちじゃなく……彩の気持ちが。
彼女はきっと逃げたかったんじゃない。
死にたかったんじゃない、生きたかったに決まってる。
でも、少し、ほんの少しでも。
───…なにも考えず休みたかったんだ。
「そうでしょ…?」
ただそれだけだったの。
きっと彩にとって、そのときが一番幸せだったときなのかもしれない。
だから幸せのまま休みたかった。
だって、麻痺してるから。
わたし達は、麻痺してるんだって。