とある先輩の、歪んだ狂愛。
「───…」
そんなとき、屋上の重いドアが開いた。
ゆっくり振り返ったわたしのまっすぐ先に現れた1人の男子生徒。
ナチュラルにセットされた柔らかい黒髪を靡かせて、心配になるくらい色が白い人。
「…飛び降りるの?」
「……そしたら、悲しんでくれますか」
「まさか。ずっとずっと恨みつづけるよ」
それは悲しい思いをした先で恨んでくれるってこと?
それだったら、それもそれでいいかなって思ってしまう。
だってわたしのこと、ずっと忘れないでいてくれるってことだから。
「明日にしなよ」
「…あした?」
「今日じゃなくてもいいでしょ、別に」
たしかに。
だってこんなにも綺麗な青空が広がっているんだから。
その男子生徒はどこか虚ろな眼差しで、わたしに話しかけてくる。
「でも、今日はこんなにも晴れてるから…怖くないんです」
溶けてしまえそうだ。
そのままスゥッと痛みなく空へと昇っていけそう。
なんて、わたしも少しその会話に便乗してみた。
すると男子生徒は、ようやくハッと意識が戻ったらしい。