とある先輩の、歪んだ狂愛。




「…わたしだって先輩しか知り合いが居ないわけじゃないですから」


「あー、あの宇佐美って新米教師?」



もちろんこの学校で連絡先として登録している生徒は先輩だけ。

大ちゃんは家にある固定電話を知ってるし、わざわざスマホで連絡を取る必要もない。


わたしの電話帳に入ってる高校生は高槻 周のみ。


だからこれは、わたしのちょっとした強がりでしかない。



「なんの話してたの?さっき職員室で」


「…別に」


「出たよ、それが許されるのって女王様気質の女優さんだけだからね」



そんなのわたしだって逆に聞きたい。

先輩、さっき担任の先生と意味深な会話を繰り広げてた。

そのことのほうが気になるのに…。


でも、聞けない。



「とりあえずもう絶対フェンスには上るなよ。次やったら噛むどころじゃないから」


「…砕く、とかですか」


「そう。俺がガリッガリに砕いて食べて飲み込む」



そんなの駄目。

粉々になってしまうし、そもそも先輩が今わたしを力づくでも止めた意味が無くなる。



< 155 / 242 >

この作品をシェア

pagetop