とある先輩の、歪んだ狂愛。
「…わたしだって先輩しか知り合いが居ないわけじゃないですから」
「あー、あの宇佐美って新米教師?」
もちろんこの学校で連絡先として登録している生徒は先輩だけ。
大ちゃんは家にある固定電話を知ってるし、わざわざスマホで連絡を取る必要もない。
わたしの電話帳に入ってる高校生は高槻 周のみ。
だからこれは、わたしのちょっとした強がりでしかない。
「なんの話してたの?さっき職員室で」
「…別に」
「出たよ、それが許されるのって女王様気質の女優さんだけだからね」
そんなのわたしだって逆に聞きたい。
先輩、さっき担任の先生と意味深な会話を繰り広げてた。
そのことのほうが気になるのに…。
でも、聞けない。
「とりあえずもう絶対フェンスには上るなよ。次やったら噛むどころじゃないから」
「…砕く、とかですか」
「そう。俺がガリッガリに砕いて食べて飲み込む」
そんなの駄目。
粉々になってしまうし、そもそも先輩が今わたしを力づくでも止めた意味が無くなる。