とある先輩の、歪んだ狂愛。




無理やりにぐっと腕の中から逃れようとしてみた。

すると余計に背中に回された腕が引き寄せてくる。


ぐぐぐっ…。

ぐいっ。


そんな繰り返しは無意味だと悟って諦める。



「人間だって動物がいなきゃ生きれない。食べ物がそのいい例でしょ。それも立派な依存じゃないの?」



…確かにそうだと思ってしまった。

ほら、こーいうところ。

うまーく丸め込むから、「それもそうだ」なんて納得してしまう。



「それに俺───…2学期いっぱいで隣町に転校が決まったんだよね」



え───…?


声にならない反応の代わり、思わずぎゅっと先輩の制服を掴んでしまっていた。



「親の転勤。本当は2学期からって言われてたけど、ギリギリまで伸ばしてもらってた」



なんで、今のタイミングで…。

だって先輩は今年で卒業だから、そのあとに進学と同じタイミングなら良かったのに。



「だから心配なんだって。涼夏、ひとりになっちゃうでしょ」



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