とある先輩の、歪んだ狂愛。
わかってる、先輩を頼ってたら駄目。
当たり前だと思ったら駄目。
自分ただひとりで立ち向かうしかない。
そんなの、先輩に出会う前のわたしにとっては当たり前だった。
「あー…どうしよ」
先輩は困ったように微笑んだ。
眉を寄せて、はぁとため息を吐いて。
「お前を置いて転校なんか出来ないよ」
例えばそれが、同情心。
可哀想だと思って、手を差し出す偽善。
もうそんなものでもいいから、先輩と離れたくないって思ってる。
「その顔は好きじゃないな」
泣き止め。
泣き止んで、わたし。
ぎゅうっとつむった目から余計に流れてしまうから、伸ばした先輩の指が優しくすくってくれる。
「だって守ってあげたくなっちゃうでしょ」
そんなものに、止まることのない雨。
やむことを知らない雨。
「…だい…じょうぶ…、です」
絞り出して、言った。
迷惑も心配もかけさせたくないから、言った。
こんなところを知られたらもっと悲惨なことになるから、平然を装った。