とある先輩の、歪んだ狂愛。




「先輩が居なくても…ここでお弁当、食べます…」


「…うん」


「来年の、体育祭で1位…獲りたいから…っ」



友達になってください、なんてもう言わない。

友達じゃなくていい。
歪んだ関係でもいい。


だって先輩の腕、こんなにも温かいから。



「…うん。俺が、応援してる」



そんなわたしの髪を撫でてくれる先輩の手。

ぎこちなくて、つたなくて、優しくて。



「…ギザギザのボロボロのガッタガタ。この美容師は今日でクビ確定だね」



わたしの髪のことだ。

自分じゃ見てないけど、やっぱりそんなにひどいんだ…。



「荷物、どこにある?」


「…2階の…女子トイレです」



先輩は着ていたカーディガンを脱いで、わたしの頭にふわっと被せた。

そして手を引かれて校舎へと一緒に戻る。



「髪、整えてあげるよ」



いじめられっ子とか、いじめっ子とか。
サイコパスとかサディストとか。

もうそんなのどうだってよくなるくらいに。


ぎゅっと握られた手。

ぎゅっと握った手。











とある先輩の、歪んだレッテル。



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