とある先輩の、歪んだ狂愛。
「先輩が居なくても…ここでお弁当、食べます…」
「…うん」
「来年の、体育祭で1位…獲りたいから…っ」
友達になってください、なんてもう言わない。
友達じゃなくていい。
歪んだ関係でもいい。
だって先輩の腕、こんなにも温かいから。
「…うん。俺が、応援してる」
そんなわたしの髪を撫でてくれる先輩の手。
ぎこちなくて、つたなくて、優しくて。
「…ギザギザのボロボロのガッタガタ。この美容師は今日でクビ確定だね」
わたしの髪のことだ。
自分じゃ見てないけど、やっぱりそんなにひどいんだ…。
「荷物、どこにある?」
「…2階の…女子トイレです」
先輩は着ていたカーディガンを脱いで、わたしの頭にふわっと被せた。
そして手を引かれて校舎へと一緒に戻る。
「髪、整えてあげるよ」
いじめられっ子とか、いじめっ子とか。
サイコパスとかサディストとか。
もうそんなのどうだってよくなるくらいに。
ぎゅっと握られた手。
ぎゅっと握った手。
*
・
とある先輩の、歪んだレッテル。