とある先輩の、歪んだ狂愛。
歪んだ決意
荷物を回収して制服に着替えて。
雨の中、腕を引かれるように連れられた場所はお洒落な外観のひとつのお店。
“ヘアサロン SI-NA”
そんな表札のドアを開けば、カランカランと温かい音。
そして室内からは落ち着くアロマの香りがふわっと広がった。
ヘアサロンシーナ……ここは、美容室…?
「……いらっしゃい」
「新規1名なんだけど空いてる?」
「あー、ちょっと待って」
こんな雨の日だから、お客さんはどうも居ないらしい。
客が座るバーバーチェアに腰かけてスマホを弄る1人の生徒には、どこか見覚えがあった。
わたしや先輩と同じ高校の制服だけじゃなく、それはいつかにわたしの前に現れた人で。
その人はそのまま奥のバックヤードへと向かった。
「うわっ!あんた何したの!?」
「後輩なんだけど、ちょっと事故っちゃたみたいで」
そしてバックヤードから出てきた、長く綺麗なブロンド髪を靡かせる女性。
わたしを見つけてぎょっとさせたあと、先輩へとため息を吐きながらもウエストポーチを肩に掛けた。