とある先輩の、歪んだ狂愛。
「可愛くしてやってほしくて」
「名前はー?」
「あ、高槻 周です」
「そんなボケ要らないのよ。その後輩ちゃんの名前よ!」
どうにも、その美容師は先輩とは知り合いらしく。
そして夏祭りでわたしに声をかけてきた人によく似ている。
店番を頼まれていたその男子生徒も、再び空いているバーバーチェアに何事も無かったかのように座った。
「…南…です」
「ミナミちゃんね、じゃあそこ座って」
「涼夏」
そう言ったのは先輩。
ブロンド髪のお姉さんは「涼夏ちゃんね」と、気にしない様子で言い換えた。
「あららー…とりあえず揃えなきゃねぇ、これは」
「うまく出来そう?」
「美容師ナメないで周」
言われたとおり座ると、すぐにバサバサの髪に触れられた。
そんな先輩も隣に立って美容師さんと2人して鏡越しに覗いてくる。
「ま、やり甲斐があるわ」
「腕の見せ所じゃん」
…なんか、落ち着かない。
それにわたし、お金あまり持ってない。
ゆっくり確認できなかったけど、もしかしたらさっき抜き取られてるかもしれない。