とある先輩の、歪んだ狂愛。
そもそもどうして女子の練習場に付き合ってるの、この人。
さっさと向こうに行けばいいのに…。
「んー…じゃあ涼夏、アンカー走れる?」
「え、」
さいあく…。
それはアンカーに抜擢されたことが最悪なんじゃなくて。
結局走るって面では同じだから最初だろうが最後だろうが、とくに気にはしてない。
「足速いんでしょ?とりあえずアンカーは決まりで」
ほら、「なんで名前で呼ばれてるの?」なんて言いたげな女子たちの視線。
どういう関係?知り合い?なんで?
って……もう聞こえなくても聞こえてくる。
「はい、じゃあ練習始め」
凍った空気の中、とりあえず用意されたバトンを取ってこようと向かえば。
スッと引っかけられた足。
「っ…、」
そんな分かりやすい嫌がらせに引っ掛かってしまうくらい、いまのわたしはどこか動揺していて。
「ごめんね~、邪魔だったからさぁ」
「…別に大丈夫」
そんなことよりもわたしは、その先にいる高槻 周へと睨みを効かせる。