とある先輩の、歪んだ狂愛。
「あの……わたし、お金…」
「サービスサービス。周の後輩なら廉の後輩でもあるし、ちょうど今日は暇だったのよ」
廉…?
廉っていうのは、そこに座ってるもうひとりの方のこと…?
「それにしても綺麗な髪ねー。トリートメントとかしてるの?」
「…いえ、とくには」
「えー本当に?きっと染めたりアイロンしたりしてない自然なストレートだからか~」
こんなにボッサボサだけど…。
バサッと手際よく身体にかけられたカットクロス、取り出されたハサミ。
チャキチャキと、ギザギザな髪がとりあえず揃えられてゆく。
「ここはあそこに座ってる椎名 廉の実家の美容室。俺もよく通っててさ」
「…そう…なんですか」
って紹介されても、わたしは彼のことはあまり知らなくて。
聞くところによると先輩とは幼なじみらしい。
「それでこのひとが廉のお姉ちゃん。独身ね」
「……最後のそれ、いる?周、あんた後で覚えときなさいよ」
「って言うと怒られるから言わないように気をつけて涼夏」
先輩、もう言ってる…。