とある先輩の、歪んだ狂愛。
思っていたよりもいい気がする。
初めてこんなにも短い髪にしたけど、軽くてスッキリしてる。
まるでストンと気持ちまで気楽になった感じだった。
「あ、ちょうど雨も上がった!」
外はキラキラと太陽が水溜まりを光らせて、それは長い通り雨だったかのように晴れていた。
いつの間にかわたしの涙も止まっている。
今日は散々な日だったけど、また新しいわたしに出会えたような気もして。
そして先輩は何度もわたしの名前を呼んでくれた。
「周、」
「ん?なーに廉」
「…前の言葉、色々ぜんぶ訂正する」
その2人しか分からない空気は重いものでもなくて。
カラッと晴れた空のように。
そして廉という人は、一瞬わたしにも視線を向けた。
先輩は「忘れちゃった」なんて、ふたりぶん笑って返す。
「麦茶でいい?」
「は、はい…」
「お、ラッキー。ドーナツある」
そして何故かわたしは先程の美容室のご近所さんだという、ひとつのマンションにお邪魔してしまっているわけで。
両親共働きで一人っ子だとは前に言っていたけど…。