とある先輩の、歪んだ狂愛。




思っていたよりもいい気がする。

初めてこんなにも短い髪にしたけど、軽くてスッキリしてる。


まるでストンと気持ちまで気楽になった感じだった。



「あ、ちょうど雨も上がった!」



外はキラキラと太陽が水溜まりを光らせて、それは長い通り雨だったかのように晴れていた。


いつの間にかわたしの涙も止まっている。


今日は散々な日だったけど、また新しいわたしに出会えたような気もして。

そして先輩は何度もわたしの名前を呼んでくれた。



「周、」


「ん?なーに廉」


「…前の言葉、色々ぜんぶ訂正する」



その2人しか分からない空気は重いものでもなくて。

カラッと晴れた空のように。


そして廉という人は、一瞬わたしにも視線を向けた。


先輩は「忘れちゃった」なんて、ふたりぶん笑って返す。



「麦茶でいい?」


「は、はい…」


「お、ラッキー。ドーナツある」



そして何故かわたしは先程の美容室のご近所さんだという、ひとつのマンションにお邪魔してしまっているわけで。

両親共働きで一人っ子だとは前に言っていたけど…。



< 183 / 242 >

この作品をシェア

pagetop