とある先輩の、歪んだ狂愛。
先輩の家に2人きりはさすがに予想してなかった。
「お、じゃまします…」
「適当に座って」
…って言われましてもだ。
未だに状況が掴めていないわたし。
美容室からの流れで当たり前のようについてきてしまったけど…。
「いや端っこ。てか隅っこ」
「…ここが落ち着くんで」
「俺は涼夏の家で遠慮なくソファーに座ってたよ?」
先輩の部屋らしいドアの先、わたしが選んだ場所は壁際ギリギリ。
カーペットも敷かれていないフローリングに正座。
「それじゃ麦茶飲めないでしょ。ドーナツ、食べよ」
今日は本当に色々あった日だ。
ずっと背中に靡かせていた黒く伸ばした髪も短くなって違和感。
先輩がどこか優しい声と眼差しで見つめてくれることにも違和感。
隣に座れば肩が触れそうなくらいにスッと近寄って来られることにも違和感。
……違和感だらけの今日。
「顔がよく見えるようになったね」
「っ、」
先輩が今までずっと覗き込むように見つめてくれていた理由が分かった。
それはわたしの顔が髪の毛に隠れてしまってたからだったんだ。