とある先輩の、歪んだ狂愛。
先輩はね、天の邪鬼。
そう言うときは「しない」ってこと。
そんなの分かってしまうんだよ。
「…もう1回、さっきのしていい?」
「……はい」
これが最後なんだろうなって、なんとなく分かってしまって。
先輩はきっと転校したら連絡も一切くれなくなって。
彩からも涼夏からも離れて、なにも考えないことを選んで。
その気持ちはいじめられっ子には分かってしまうから、止めることさえ出来っこなくて。
「キスだよ?」
「…はい」
「…止まれないかもよ?」
一々言わないで、聞かないで。
わざわざ言わないで。
そう、先輩はわざわざ言ってくる。
わたしが可哀想だってことも、憐れで惨めだってことも。
それは最初っから。
『じゃあ俺も今日からイジメていい?』
いじめられたことなんか無かった。
それはわたしを守ってくれていて、いつだって守ってくれて。
ほら、天の邪鬼。
「…逆に拒否権は、あるんですか」
「ないね」
「───…っ、」
それはさっきよりもまた優しいもの。