とある先輩の、歪んだ狂愛。
俺、お前を───…今の思い出じゃなくて、過去の思い出にしたいって思ってる。
「───涼夏!」
昇降口、しんと静まり返った場所で1人履き替えている後ろ姿。
すぐに振り返って「…どうしたんですか」と言ってくる後輩。
「まだ帰ってなかったの?また呼び出しでも食らった?」
「委員会の仕事で残ってただけです」
他の生徒は居ない、だからぎゅっと抱きしめてくる。
きっと涼夏はそう思ってるんだろうけど。
俺からしたら、たとえ生徒が散らばってたとしても同じようにしてた。
「俺が居なくなったら、教室で食べなよお弁当」
「…なんでですか」
「お前ひとりだよ?あんな暗ったるい場所でさ、ゴキブリとか蜘蛛出るよ?」
その小さな背中を想像したら堪らなくなる。
ずっとずっとお前は1人でそうしてきたはずなのに、それでも俺と関わるようになって笑顔が少しずつ増えて。
でもまた、そんなものに戻らせてしまうんだと。
「過保護ですよ先輩。わたし、ひとりでも大丈夫です」
その「大丈夫」は昔と違っても。
俺が嫌いだったものじゃなく、本当に大丈夫なんだろうって思えるものだとしても。