とある先輩の、歪んだ狂愛。




俺、お前を───…今の思い出じゃなくて、過去の思い出にしたいって思ってる。



「───涼夏!」



昇降口、しんと静まり返った場所で1人履き替えている後ろ姿。

すぐに振り返って「…どうしたんですか」と言ってくる後輩。



「まだ帰ってなかったの?また呼び出しでも食らった?」


「委員会の仕事で残ってただけです」



他の生徒は居ない、だからぎゅっと抱きしめてくる。

きっと涼夏はそう思ってるんだろうけど。


俺からしたら、たとえ生徒が散らばってたとしても同じようにしてた。



「俺が居なくなったら、教室で食べなよお弁当」


「…なんでですか」


「お前ひとりだよ?あんな暗ったるい場所でさ、ゴキブリとか蜘蛛出るよ?」



その小さな背中を想像したら堪らなくなる。

ずっとずっとお前は1人でそうしてきたはずなのに、それでも俺と関わるようになって笑顔が少しずつ増えて。


でもまた、そんなものに戻らせてしまうんだと。



「過保護ですよ先輩。わたし、ひとりでも大丈夫です」



その「大丈夫」は昔と違っても。

俺が嫌いだったものじゃなく、本当に大丈夫なんだろうって思えるものだとしても。



< 203 / 242 >

この作品をシェア

pagetop