とある先輩の、歪んだ狂愛。




「冬休みだからって浮かれるなよー」


「またね~うさみん!やっぱり今年もクリぼっち?」


「今年もってなんだよ。お前らが俺の何を知ってんだ」


「え~、彼女いないってことー!」



雪はまだ降りそうにない。

枯れ葉がヒュルルルルと空へ舞って、グラウンドに落ちて。


明日から冬休み、相変わらずバイトでぎっしりと埋めた。



「すず?帰らないのか?」


「…学級日誌。日直だから」


「あー、早く仕上げて帰れよ」


「うん」



冬休み前、最後の日直。


だんだんと静かになってゆく教室は校内へと伝わって。

しんと静まり返る中、シャーペンを動かす。



「…見っけ、」



ガラガラガラ───ピシャン。


ひとりの3年生徒は、1-Bへと断りもなく当たり前のように入ってドアを閉めた。

わたしは気にすることなく日誌に顔を落とす。



「卒業おめでとうございます、先輩」


「……うん、早くない?」


「前倒しです」



だって、本当の卒業式にはあなたはここに居ないから。



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