とある先輩の、歪んだ狂愛。
「最後にね、彩。───…“すごく幸せだった”って、小さな声で言ったの」
だったらなんで自殺したんだ、なんてもう責められなかった。
責める理由すら思い浮かばなくて。
ただ俺の頬を流れる一筋の涙だけが、すべての答えであり彩に対する返事。
「あんな最後を迎えさせてしまったけれど…親にとってそんなにも嬉しい言葉はないわ」
いじめられてる毎日でも。
1人でお弁当を広げる毎日でも。
それでも“幸せだった”って。
そんな彩の強がりに似た本心は、彩らしいとも思ってしまった。
「彩はきっと…幸せの中で休みたかったのね」
そんなの俺だって幸せだったよ。
すごく可愛くて、大好きだった。
ぎこちなくも優しい笑顔も、俺に合わせてくれちゃうところも、隣でただ笑ってくれるだけでよかったんだ。
それだけで俺は幸せだったんだよ彩。
「そうさせてあげられたのも、高槻くんのおかげ。…本当にありがとう」
その場に崩れるように膝をついた俺に、優しい手のひらが背中を撫でてくれる。
まるでそれが思い出の中にある彩の温かさと似ていて。