とある先輩の、歪んだ狂愛。
「あなたが笑ってることが、生前から彩にとって幸せなことなの。
だからもう自分を責めて背負うのはやめて高槻くん」
責められなければいけないと思っていた。
恨まれなければ、俺は自分すらも彩すらも許せないような気がして。
でも───…そんなんじゃなかった。
俺はとっくに許されていた。
「…俺、好きな季節が2つあるんです」
「あら、2つも?」
「はい。ひとつは…彩と出会った春です」
春と言っても、桜が散ってすでに枯れてしまっている春。
名前は知っていたけど、関わってこなかったある日。
俺は物陰に隠れるように1人でお弁当を食べてる眼鏡の女の子に近づいた。
そんな春が、好きだ。
「もうひとつは───…涼しい、夏です」
「…初夏ってことかしら?」
「いえ、そういうわけでもなくて。涼しい夏が好きなんです俺」
冷淡なんて呼ばれるくらいに涼しい夏。
だったら本当に涼しくしてほしいのに、冬生まれなんて面白いギャップ持ち。
扱いづらくて素直じゃなくて、本当に困った季節で。