とある先輩の、歪んだ狂愛。




バックヤードから出れば、レジ前に1人の男性らしき人が立っていて。

サラサラと靡く黒髪に、心配になるくらい白い肌。


そのままうしろを通って佐々木さんと入れ替わるようにレジカウンターへと入った。



「このガムって美味しいの?」



どこかで聞いたことのある台詞だ。

そしてどこかで聞いたことのある声だ。



「───…え…」


「…必ずあるじゃん、コンビニのレジの横に」



そして同じ返し。

気づけばそんなことが自然に交わされていて。


それまで顔を見てなかったから見ようと視線を移そうとしても、どうにも動いてくれない。

見たらもっと駄目な気がした。



「…美味しい、です」



連絡なんかくれなかったのに。

もう忘れてしまうところだった。



「…買ったことあるの?」


「…ない、です…けど」



今日がお祭りの日だって思い出さなかったら、あなたのことなんか忘れてた。


だって夏休みだよ。

もう、夏休みになってるんだよ。



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