とある先輩の、歪んだ狂愛。
じっと座っていればワシャワシャと拭いてくれる。
…やっぱり言うことを聞いてくれない。
「これ着替え」
ポスッと、今度はジャージが投げられた。
ふわっと広がった香りは消毒液の匂いなんかじゃなく。
それは今となりに居る人のシャンプーのようなヘアワックスのような、マスカット系の匂いで。
「俺の。明日までには洗って返して」
「……なんで、ですか」
「は?お前って人から借りたものは返さない主義?それどーかしてるよ」
ちがう、そうじゃない。
そんな最低な人間じゃない。
お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの。
それはどっちかと言うとあなただ。
「これは、…いじめですか?」
「…そう、イジメ」
だとしたら随分と優しいいじめだ。
こんなの、ぜんぜん苦しくない。
むしろ居たたまれなくなって、今すぐにでも逃げてしまいたくなる。
「ねぇ本当に感覚麻痺ってるのか知らないけど、さすがに今日のそれはキツいでしょ。精神的にも色々と」