とある先輩の、歪んだ狂愛。
さすがにそれはない。
俺だって信頼してないし、まだ関わってそんなに経ってもない。
ただ暇ができれば絡みに行ってるだけで。
「警戒心の強いあの子が誰かを家まで連れて来るだなんて、初めてだもの」
「…それは俺が無理やりってのもあるかと思います」
「ううん。全然、ちがうのよ。きっとあの子すっごく楽しいのね」
え、楽しい?どこが……?
笑ってもないし睨んでくるし、俺のこと厄介で面倒って思ってるに違いないのに。
それでもやっぱり母親。
娘の微量な表情の変化すら分かってしまうらしい。
「涼夏、わざわざ言わないのよ」
母親の眼差しはベランダの背中へと移った。
だから俺もつられるようにそっちへと。
ようやくすべて取り込み終えたのか、ふぅと一息吐くかのように肩が上下に動いた。
「気になることがあってもいつも言葉にしないの。
だから今日が初めて、洗濯物干しっぱなしって私にわざわざ知らせてくれたのは」