とある先輩の、歪んだ狂愛。
俺に歯形付けられて腰抜かしてたってのに。
なーんにも気にしてないその顔、クールぶっちゃってさ。
そんな俺のスッと移した視線と、不安気に覗き込む目がバチッと合った。
「ん?なに?」
「…あ、味…どうですか」
「おいしいよ?もう殿堂入りみたいなものだから言わなくても伝わるかなって」
「…良かったです」
もしもし?顔が赤いんですけどお嬢さん。
なにその顔。
俺にどう反応しろっていうの?
「あの、先輩、」
「ん?」
「…もし、このリレーでわたしが1位獲れたら、」
6月の終わる涼しい風が吹いた。
黙々と弁当を食べつづける俺に、小さな声がゆっくりゆっくり伝えてくる。
その音はどんな雑踏の中だとしても俺には聞こえてくるんじゃないかって思う。
聞き逃しちゃ駄目な気がする。
せめてこいつの声だけでも。
「と、…友達に、…なってくれませんか、」
「……」
サァァァァァと、木がうねった。