とある先輩の、歪んだ狂愛。




いじめられっ子の根本性格って、馬鹿正直ってとこだと思う。

なんでもうなずくから騙されて馬鹿を見る。

その調子だといつかオレオレ詐欺にすら引っかかるんじゃないの。



「リレー、応援してるよ。…お前のいじめっ子として」


「…ありがとうございます」



これ、嫌味。

そんな嫌味ですら感謝されちゃったよ。


だけど泣かないそいつに嫌気すら覚えて、なんで泣かないんだよって責めたくもなって。

もっと、もっと俺を責めて恨んで最低だと貶して。

そして蔑んで嫌いになればいい。



「あ…、」



箸で掴んだ唐揚げが涼夏の手からポトンと落ちて転がる。


3秒ルール、まだ大丈夫でしょ。


もし俺が本当にこいつのことが大嫌いで、こいつをいじめる生徒たちと何ら変わらない人間だったら、そんなことを平気で言ってた。

土だらけになった唐揚げを指差して嘲笑ってた。



「…蟻さんのご飯にしてあげようか」


「……はい」



蟻さんのご飯ってなんだよ…。

きっと涼夏以上に動揺しているのは───俺だ。











とある先輩の、歪んだ思い。



< 89 / 242 >

この作品をシェア

pagetop