とある先輩の、歪んだ狂愛。
いじめられっ子の根本性格って、馬鹿正直ってとこだと思う。
なんでもうなずくから騙されて馬鹿を見る。
その調子だといつかオレオレ詐欺にすら引っかかるんじゃないの。
「リレー、応援してるよ。…お前のいじめっ子として」
「…ありがとうございます」
これ、嫌味。
そんな嫌味ですら感謝されちゃったよ。
だけど泣かないそいつに嫌気すら覚えて、なんで泣かないんだよって責めたくもなって。
もっと、もっと俺を責めて恨んで最低だと貶して。
そして蔑んで嫌いになればいい。
「あ…、」
箸で掴んだ唐揚げが涼夏の手からポトンと落ちて転がる。
3秒ルール、まだ大丈夫でしょ。
もし俺が本当にこいつのことが大嫌いで、こいつをいじめる生徒たちと何ら変わらない人間だったら、そんなことを平気で言ってた。
土だらけになった唐揚げを指差して嘲笑ってた。
「…蟻さんのご飯にしてあげようか」
「……はい」
蟻さんのご飯ってなんだよ…。
きっと涼夏以上に動揺しているのは───俺だ。
*
・
とある先輩の、歪んだ思い。