とある先輩の、歪んだ狂愛。
マスクをして、クシャッと無造作にかさばむ前髪からはあまり顔がよく見えない。
こういう客ってやっぱり居るんだ…。
店員にタメ口で偉そうに絡んでくる客。
まさにこの男はその類いだ。
「買ってみようかな、じゃあ…3コ」
「…180円になります」
「あぁ、じゃあはい」
1000円を追加させて、小包に包まれた3つを購入した男。
…小銭はないの。
「ありがとうございましたー」
でもある意味コンビニ店員としては客に買わせるという商売が出来てしまったっぽい。
まぁ、悪い気はしない。
「笑顔くらい振り撒いても良かったかな…」
なんて、わたしらしくない。
残念ながら振り撒く笑顔なんか持ってもいないわたしは、ただ淡々と売って渡しただけだった。
変なひと……。
常連客とかだったら嫌だなぁ。
「凉夏ちゃんそろそろ上がっていいよー」
「あ、はい。お先に失礼します」
「おつかれー」
初バイト、初出勤。
色々面倒なことは多いかもだけど、なんとか続けられそうかも。